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第82話 帰る場所

مؤلف: marimo
last update تاريخ النشر: 2026-03-19 20:20:30

屋敷の扉を開けた瞬間、玲司は花の香りに包まれた。

 普段は静まり返っているはずの九条家の屋敷が、その日だけはどこか柔らかな空気をまとっている。外の空気をまとって帰ってきたはずなのに、胸いっぱいに広がった甘やかな香りに、思わず足が止まった。

 玄関ホールの中央には、存在感を主張するように置かれた大きな花束があり、その脇には、上質な革張りの宝飾品の箱がいくつも重ねられていた。白い百合、淡いピンクの薔薇、季節の小花が幾重にも重なり、まるで祝福のように空間を彩っている。

 自分では買いに行けなかったため、秘書に「綾乃に花と宝石をいくつか送ってくれ」そう頼んだのだった。

 仕事の合間に簡潔に伝えただけだったが、秘書はいつも以上に気を利かせたらしい。

 “いくつか”の解釈が、どうやら豪快すぎたようだ。

「……やりすぎだろう………」

 思わず漏れた独り言は、苦笑まじりだった。

 そう言いながら、彼は照れたように綾乃を見る。視線を合わせた瞬間、胸の奥に、じんわりと温かいものが広がった。

 失いかけて、初めてわかった。

 当たり前のようにそこにいる存在が、どれほど自分の心を支えていたのか。

 この屋敷
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